今回はる前庭疾患を紹介します。
まずはこちらの動画をご覧ください。
眼球が小刻みに動いています。本人の意思とは関係なく動いています。
おそらく、ジェットコースターに乗っているような気分であると思われます。
歩行は困難ですし、嘔吐、失禁等も伴います。
老齢(10才以上が多いと思います)のワンちゃんで、冬季に、何の前触れもなく始まります。
今年度は今までで6例の発症がありました。(シーズー・ダックス・柴・フレンチブル×2・ハウンド系)
例年になく多くの患者さんが発症しました。
主訴
突然歩けなくなった。明らかにいつもと様子が違う。
症状
立てない・歩けない、眼振、斜頸、嘔吐がある場合もあります。(教科書では30%程度の発生率とされています。)
検査
神経疾患の診断には、二次診療施設でのCT・MRI検査が必要です。
ただ、経験的に1週間程度で治ります。CT・MRIは撮影しない場合がほとんどです。
一般の病院では、血液検査・レントゲン検査等でほかの内臓疾患を否定し、消去法で脳を疑います。
治療
食べられるようになるまでは点滴します。
脳炎の可能性を考えて抗生物質やステロイドを併用します。
また、嘔吐があれば吐き気止めを使用します。
経過
経験的には3-4日で眼振が止まります。(日を経つごとに揺れが減少します。)
目の揺れが改善すると食べられるようになり、そうなれば時間の問題で解決します。
1か月後には後遺症もなく、以前と同じ状態に戻ります。
食欲の改善は、ワンちゃんの性格が大きく影響します。
臆病だったり慎重な子は、少しでも眼振が残っていると食べません。注射器等で強制給餌が必要な場合もあります。
原因
教科書的には老齢性の前庭疾患は特発性=原因不明とされています。
そのため、以降に必要となる薬等は無いとされています。
その半面、予防策もないので、誰にも起こる可能性があるとも言えます。