こちらがフィラリア検査のキットです。
赤い部分に血液を垂らして2-3分で検査が終わります。
陰性の場合は写真の様な赤ライン1本、陽性の場合には2本になります。
こんなキットがコロナウイルス検出に開発されることが期待されています。
ただ、簡単な道のりではないと思います。
大学時代微生物学教室に所属し、ウイルス・遺伝子・タンパクなどを扱ってきました。
学生時代の記憶を頼りに、私が思う(深く調べていません)、キット開発の道のりをまとめてみました。
①ウイルスの分離・培養
ウイルスは生きた細胞でしか増やすことができません。ウイルスに適した培養細胞を準備することから始まります。
学生時代は、培養細胞の準備が研究生1年目の課題でした。
現在はコロナウイルスが増殖しやすい細胞は判明しており、増殖培養は各研究機関で可能になっていると思います。
栃木県のHPからの写真です。
透明容器の底には培養細胞が張り付いており、ピンク色の培養液を入れている写真です。
②遺伝子の解析 分離したウイルスの塩基配列を読みます。
シーケンサーと呼ばれる専用機械が使われます。(和研株式会社HPより)
塩基配列とは例えば・・・
ATGAAGGCAGCACTAGCAGTCCTGCTATATGCATTTACAACTGCAAATGCCGACACATTATGTATAGGCT
このような文字列で表記されます。
新型コロナウイルスは約3万のATGCで構成されているそうです。上記で70、これの約400倍です。
ここまでは日本においても終了しています。
③たんぱく質を作成する部分を特定する
新型コロナは約3万のATGCで構成されていますが、役割のある部分(たんぱく質の設計図として機能している部分)と、ただあるだけ部分があります。
ATGAAGGCAGCACTAGCAGTCCTGCTATATGCATTTACAACTGCAAATGCCGACACATTATGTATAGGCT
例えば、赤の部分はたんぱく質を作るが、黒の部分は何も作っていない、というような感じです。
3万ある文字列から、たんぱく質を作成している部分を割り出す必要があります。
やみくもに探してもヒットしません。
研究者は様々な知識と経験で予測し、何百・何千というパターンを試していると思います。
④割り出した遺伝子が作るたんぱく質を抽出します。
この過程も複雑です。たんぱく質の設計図となっているGCAGCACTAGCAGの部分を新型コロナから切り出します。
大腸菌を用意します。ウイルスは生きた細胞でしか増殖できませんが、大腸菌は試験管に液体を入れておけば簡単に増殖します。
大腸菌の遺伝子に切り込みを入れて、その部分にGCAGCACTAGCAGをはめ込みます。その大腸菌を増やせばGCAGCACTAGCAGが作るたんぱく質も同時に増殖させることができます。
そして、大腸菌いっぱいの中からGCAGCACTAGCAGから作られたタンパク質だけを上手に取り出します。
⑤取り出したタンパク質と、コロナウイルスに感染した人の血液とを混ぜて、免疫反応が起こるかを確認します。
A 感染初期の抗体が少ない血液にも反応すること
B 他のウイルスには反応しないこと
C キットにするために乾燥させても反応性が残ること
そんなたんぱく質が分離されればキット開発成功となります。
各大学や各研究機関は、名声・研究費を得られる大チャンスであり、昼夜実験を繰り返していると、勝手に想像しています。
日本ウイルス学会のHPでは「現在、臨床現場でそのまま使える迅速診断試薬の開発が急ピッチで進められています。」と表記されています。
一般的に考えて数か月で開発できるものではない、と思っていますが、日本の化学技術に期待です。