新型コロナウイルスを診断するにはPCR検査しかありません。
日本では検査数が外国と比較して圧倒的に少ない、と盛んに報道されています。
私は「無理だって」「大変すぎるもん」と思って報道を見ています。
大学時代に最初に与えられたテーマは、PCR検査を使う研究でした。
しかし、何の成果を残すことなくテーマ変更となりました・・・。
PCRは数十回とやりました。でも、できませんでした。
PCRとは繊細な作業の連続であり、高い集中力が要求されます。
私が学生だった時代のPCR検査の過程は以下の様でした。
①検体からDNAを抽出する
②DNAをPCR装置にかけて特定部位を増幅させる(特定部位;新型コロナウイルスのみに存在する遺伝子配列の部位)
③電気泳動で増幅された特定部位が存在するかどうかを確認する
①は患者さんの、唾液・血液など多数の不純物が含まれる材料から、遺伝子だけを検出する過程です。
これは、ネットで探した遺伝子抽出キットの1例です。
ジーエルサイエンス株式会社、MonoFas®口腔粘膜細胞ゲノムDNA抽出キットⅧと、その使用方法です。
キット自体は4種類の液体です。
使用方法は、A・B液(他2種類)を入れて混ぜて加温する→遠心分離してC液を混ぜる→遠心分離してD液を混ぜる、というような作業です。
やること自体は単純です。
検体はこのような状態だと想像しています。(TAITEC-onlineの商品説明の写真です。)
この写真では24本のチューブがあり、24人の検査を同時にするならばこのような状態になります。
A液入れて混和して、B液入れて混和して・・・を24本それぞれに実施することになります。
これが大変なんです。少しでも集中力を切らすと・・・
〇今何本目やっていた?(17本目だった?18本目だった?)
〇ピペットの先を交換せずに次の検体を吸ってしまった。(17番目と18番目の検体が混ざりました。もちろん失敗です。)
などなど、実に様々な失敗リスクがあります。
②PCR装置を使う③電気泳動をする、も同じような作業の繰り返しです。
いくつもある作業過程の中で一つでもミスをしたらすべてが失敗となります。
コロナウイルス陽性判定は、その人の2週間は奪うことになり、人生を左右するかもしれません。
手技の失敗により、陽性であるはずの人を陰性としたならば、感染拡大に関与することになります。
また、ウイルスは人から人へ感染することが知られており、検査をしている本人が感染するかもしれません。
そんなプレッシャーを感じながら、この単純作業を黙々と繰り返す必要があるのです。
一人でできるのは、1回10検体、朝昼晩3回やって、合計30検体、くらいが限界ではないでしょうか?
日本の検査数が増えないのも仕方がないよ、と思っているPCR経験者(失敗者)でした。